HEPAフィルターは何を除去できる?知っておきたい性能や用途
この記事では、HEPAフィルターの仕組みや性能、除去できる物質・できない物質などをわかりやすくご紹介します。
目次
HEPAフィルターとは?
HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)は、空気中の微粒子を高効率で捕集するために設計されたエアフィルターで、「ヘパフィルター」と読みます。
具体的には、空気中の微粒子を高い効率で捕集できる高性能フィルターとして、空気清浄機だけでなく、病院や研究施設、クリーンルームなど高い清浄度が求められる環境でも広く活用されています。

【表で紹介!】除去できる微粒子の例
HEPAフィルターは、花粉や黄砂、PM2.5、カビ胞子などの粒子状物質を高い効率で捕集できます。細菌や、飛沫に付着したウイルスの除去にも役立ちます。
ウイルス自体は0.1μm程度と非常に小さいものもありますが、通常は咳やくしゃみなどで発生する飛沫(エアロゾル)に付着した状態で空気中を漂っています。HEPAフィルターはこうした飛沫を効率的に捕集できるため、間接的にウイルスを含む飛沫を除去することに貢献します。
このように、HEPAフィルターはアレルギー物質、環境汚染物質、そして飛沫に付着したウイルスなどの病原体など、多岐にわたる有害な微粒子から私たちを守る役割を果たしています。
除去できないもの(ニオイ・ガス状物質)
HEPAフィルターは空気中の微粒子を非常に高い効率で捕集できる高性能フィルターですが、その捕集対象はあくまで「粒子状物質」に限定されます。そのため、気体分子である「ガス状物質」や「ニオイの成分」は、粒子径が極めて小さいため、HEPAフィルターでは除去することができません。
例えば、新築の建材や家具から放出されるホルムアルデヒドやトルエンといった揮発性有機化合物(VOC)は、ガス状物質でありHEPAフィルターを通過してしまいます。また、タバコの煙に含まれる一酸化炭素やアンモニアなども同様です。これらのようなニオイやガス状物質を除去したい場合は、用途に応じて、活性炭フィルターのように吸着作用を持つフィルターや、化学反応を利用する触媒フィルターなど、異なる機能を持つフィルターとの併用が必要です。
HEPAフィルターの性能と仕組み|0.3μmを捕集できる理由
HEPAフィルターは、なぜ高い捕集性能を持つのでしょうか?
その理由は、単に「目の細かいフィルターだから」ではありません。HEPAフィルターは、厳格な性能基準と、微粒子を捕集する独自の仕組みによって高い性能を実現しています。
ここでは、HEPAフィルターの性能基準や、微粒子を捕集する仕組みについて解説します。
0.3μmの粒子を99.97%捕集する性能
HEPAフィルターは、「定格風量で0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa(パスカル)以下の性能を持つエアフィルター」とJIS規格(JIS Z 8122など)で定められています。
特に注目すべきは「0.3μmの粒子を99.97%以上捕集」という点です。
これは、10,000個の0.3μm粒子がフィルターを通過しようとした場合、通り抜ける粒子はわずか3個以下という計算になります。この高い捕集性能により、HEPAフィルターはクリーンルームや医療現場など、高い清浄度が求められる環境で広く利用されています。
なぜ0.3μmが基準?最も捕集しにくい粒子の謎
なぜ「0.3μm」が基準として用いられるのか、疑問に思われる方もいるかもしれません。
実は、この0.3μm付近の粒子径が、フィルターにとって最も捕集しにくいサイズ、すなわち「MPPS(Most Penetrating Particle Size)」であることが科学的に解明されています。
一般的に、0.3μmよりも大きな粒子は繊維にぶつかりやすく捕集されやすくなります。そして、0.3μmよりも小さな粒子は、空気中の分子と衝突することでランダムに動き回る「ブラウン運動」と呼ばれる現象を起こします。この不規則な動きにより、濾材繊維に接触して捕集されやすくなります。
一方、0.3μm付近の粒子は、そのどちらの効果も受けにくく、最も通過しやすいサイズです。
つまりHEPAフィルターは、最も捕集が難しい粒子で99.97%以上の性能を保証しているからこそ、高い信頼性を持っているのです。
HEPAフィルターが微粒子を捕集する仕組み
HEPAフィルターは、直径1〜10μmの極めて細いガラス繊維を蛇腹状に加工した構造を持っています。この構造によって、空気中の微粒子をしっかり捕集し、クリーンな空気を保つことができます。
微粒子は主に次の3つの仕組みで捕集されます。
① さえぎり(遮断)
粒子が繊維表面に接触して捕集される仕組みです。花粉など比較的大きな粒子に働きます。
② 慣性衝突
空気の流れが曲がっても、粒子は慣性で直進し、繊維にぶつかって捕集されます。数μm以上の粒子に有効です。
③ 拡散(ブラウン運動)
0.1μm以下の微小粒子は空気分子との衝突で不規則に動き、繊維へ接触しやすくなります。ウイルスサイズの粒子捕集に重要な仕組みです。
このように、HEPAフィルターは様々な粒子サイズに対応する複数の捕集原理を組み合わせることで、その高性能な捕集能力を実現しているのです。
HEPAフィルターの主な用途
HEPAフィルターは家庭用機器から医療・産業分野まで幅広く利用されています。
【家庭用】空気清浄機・掃除機・エアコン
空気清浄機では、室内のスギ花粉、ハウスダスト、PM2.5、ペットのフケなどの微粒子を除去し、アレルギー対策や居住空間の空気質改善に大きく貢献しています。
また、掃除機に搭載されているHEPAフィルターは、吸引した微細な塵やアレルゲンが排気とともに室内に再飛散するのを防ぎ、排気をクリーンに保つことで室内の空気汚染を抑制します。
さらに、一部の高性能なエアコンにもHEPAフィルターは採用されており、冷暖房運転中に室内の空気を清浄化する機能を提供し、快適な室内環境の維持をサポートしています。
【産業・医療用】クリーンルーム・病院
産業・医療分野におけるHEPAフィルターの重要性は非常に高いものです。製薬工場、半導体工場、食品工場などで設置される「クリーンルーム」において、HEPAフィルターは製品の汚染を防ぎ、品質と歩留まりを維持するための基幹技術として不可欠です。ISO 14644-1で定められた清浄度クラスを達成し、維持するためには、HEPAフィルターによる高性能な空気清浄が必須となります。
また、病院の手術室、ICU(集中治療室)、無菌室、感染症病棟などでは、HEPAフィルターが院内感染のリスクを低減し、患者さんと医療従事者の方々の安全を守るために極めて重要な役割を担っています。これらの環境では、空気中の微粒子を徹底的に除去することで、感染経路を断ち、安全な医療環境を確保しています。
HEPAフィルターの種類と選び方のポイント
HEPAフィルターにはさまざまな種類があり、用途に応じて最適な製品を選ぶことが重要です。
クリーンルームや医療現場、家庭用など、それぞれの環境によって求められる性能は異なります。ここからは、上位性能のULPAフィルターとの違いや、選定時に押さえるべきポイントをわかりやすく解説します。
ULPAフィルターとの性能比較
HEPAフィルターよりも高性能なフィルターとして「ULPAフィルター」があります。
JIS規格では、ULPAフィルターは0.15μmの粒子に対して99.9995%以上の捕集率が求められており、HEPAフィルター(0.3μmで99.97%以上)よりも高い性能を持ちます。
主に半導体製造などの超高精度な環境で使用されますが、その分、圧力損失が大きくなりやすく、設備負荷や電力コストが増加する点には注意が必要です。また、フィルター自体の価格も高いため、導入時は性能とコストのバランスを考慮する必要があります。
用途に応じたフィルター選定のポイント
HEPAフィルターは、捕集性能だけでなく、以下のポイントを総合的に判断して選ぶことが重要です。
1. 要求清浄度:まず、管理対象となるエリアがどの程度の清浄度を求められているのか、ISOなどの基準に基づいて明確にします。
2. 圧力損失: 空調設備への負荷や消費電力に影響するため、事前に確認します。
3. 耐久性・材質: 高温・高湿・薬品環境など、使用環境に適した素材を選びます。
4. コスト: 購入費用だけでなく、交換頻度や電力コストも含めて検討します。
5. 供給体制: 安定供給やトラブル対応など、メーカーの信頼性も重要です。
HEPAフィルターの交換時期とメンテナンスの注意点
HEPAフィルターは高性能ですが、一度設置すれば性能が永続するわけではありません。性能を維持するためには、適切な交換とメンテナンスが重要です。
ここでは、交換時期の目安や管理方法、手入れ時の注意点を解説します。
フィルターの寿命と交換時期の目安
HEPAフィルターの寿命は、使用環境や粉塵量、設備の稼働状況によって変わります。一概に「何年」と断定することは難しいですが、一般的には1~5年程度が交換目安とされています。
ただし、年数だけで交換時期を判断すると、性能低下を見逃したり、まだ使用できるフィルターを交換してしまったりする可能性があります。
そのため、実際の運用では「差圧(圧力損失)」を確認しながら交換時期を判断する方法が広く採用されています。
差圧(圧力損失)で交換時期を判断する
HEPAフィルターは粒子を捕集するほど目詰まりし、空気が通りにくくなります。このとき、フィルターを通過する前と後で空気の圧力差(=圧力損失、差圧)が大きくなるという現象を利用します。
差圧計でこの数値を定期的に確認し、メーカーが定める交換基準値(終末圧力損失)に達したタイミングで交換します。
この「差圧管理」を行うことで、性能低下を防ぎながら、適切な交換時期を判断できます。
水洗いや掃除機での清掃はできる?
産業用・医療用HEPAフィルターは、基本的に水洗いや掃除機による清掃は避けるべきです。
その理由として、HEPAフィルターの濾材は非常にデリケートなガラス繊維でできており、水洗いや物理的な衝撃によって損傷し、捕集性能が著しく低下したり、ピンホール(微小な穴)が発生したりするリスクがあるためです。
産業用HEPAフィルターは、性能が劣化した場合は交換することが正しいメンテナンス方法であることを強く認識し、誤った知識によるトラブルを未然に防ぐようにしてください。
交換作業で注意したい「二次汚染」
使用済みのHEPAフィルターには、捕集した粉塵や微粒子が高濃度で付着している場合があります。
交換時には空調停止や養生、防護具の着用など、再飛散を防ぐ対策が重要です。特に医療・製薬・クリーンルーム用途では、専門業者による交換が推奨されるケースもあります。
弊社では、クリーンベンチや安全キャビネット(バイオハザード対策用キャビネット、ナノマテリアル対策キャビネット等)で使用されているHEPAフィルターの交換作業やメンテナンスを承っております。研究施設等でこれらの設備をお使いの方や設備のご担当者様など、お困りのことやご相談がございましたら、お気軽に弊社までお問い合わせください。
まとめ
HEPAフィルターは、0.3μmの粒子を99.97%以上捕集できる高性能フィルターです。この記事では、花粉やPM2.5、細菌・ウイルスを含む飛沫などの微粒子除去に活用され、クリーンルームや医療現場、製造設備など幅広い分野で重要な役割を担っているということを解説させていただきました。
また、性能を維持するためには、差圧管理による交換時期の確認や、正しい取り扱いが重要です。
当社では、HEPAフィルターが使われている、バイオハザード対策用キャビネット・ナノマテリアル対策キャビネット(ケミカルハザード対策キャビネット)・クリーンベンチ・クリーンブース等、各種機器のメンテナンスを行っております。
こちらのページでメンテナンス工程などをご紹介しておりますので、ぜひ一度ご覧ください。

