排気ファンの基礎知識|シロッコファン・ターボファンの違いを解説
この記事では、業務用排気ファンの基本的な役割と、代表的なシロッコファン・ターボファンの特徴を解説します。
目次
業務用排気ファンは安全な環境を作る重要設備
業務用排気ファンは、工場や研究室、厨房、ビルといった多様な施設において、発生する空気中の汚れ、熱、におい、ガスなどを屋外へ排出する設備です。室内の空気を入れ替えるだけでなく、作業環境を整え、そこで働く人や利用者の安全を支える役割を担っています。
たとえば大学の研究室や企業のラボでは、実験中に発生する化学物質の蒸気やガスを、ドラフトチャンバーなどの局所排気装置を通じて排出したり、工場では、製造工程で発生する熱気や粉じん、においなどを排出し、作業しやすい環境の維持や設備・製品への影響を抑制したりしています。
家庭用の換気扇と比べると、ダクトを通して空気を運ぶパワーや、長時間の連続運転に対応する耐久性が求められ、また、扱う物質や使用環境によっては、腐食に強い材質、防爆仕様、耐熱仕様などが必要になる場合もあります。
研究室・ラボでは「排気量」だけでなく安全な排気経路も重要
大学の研究室や企業のラボなど、化学物質を取り扱う環境では、必要な排気量を確保することに加え、排気した空気をどこへ、どのように排出するかも重要です。
例えば、ドラフトチャンバー(ヒュームフード)などの局所排気装置から排出された有害ガスが、外部の風向きや建物の構造によっては、給気口や窓から再び室内に戻ってきてしまう「再循環」のリスクが存在します。
そのため、研究室・ラボの排気設備では、ファン単体の性能だけでなく、ダクトの経路、排気口の位置や高さ、周辺建物との関係、給気とのバランスなどを含めて確認することが大切です。排出する物質の種類や濃度によっては、排ガス処理装置を組み合わせる必要もあります。
【種類別】シロッコファンとターボファンの違いを徹底比較
ここからは、数ある業務用排気ファンの中でも、特に広く利用されている「シロッコファン」と「ターボファン」について詳しく紹介していきます。
シロッコファン:静音性が高くダクト排気に最適
シロッコファンは、「多翼ファン」とも呼ばれる遠心式の排気ファンです。比較的コンパクトな形状で、ダクトを通して空気を送る用途に広く使われています。
構造と特徴
シロッコファンは、多数の小さな羽根が円筒状に配置されています。これらの羽根は「前向き羽根」と呼ばれ、回転方向と同じ向きに湾曲しています。ファンが回転すると、この前向き羽根が空気を吸い込み、遠心力によって外部へと押し出します。羽根の枚数が多いため、低い回転速度でも安定した風量を確保しやすく、ダクト抵抗に打ち勝つ静圧を効率的に発生させることが可能です。
シロッコファンの大きなメリットは、第一に「運転音が静かであること」です。これは、羽根の形状と回転速度が関係しています。
次に、ダクトなど静圧損失が大きい場所でも安定した排気ができるため、ビル全体の空調システムや厨房排気など、複雑な配管経路を持つ環境に最適です。また、一般的にターボファンに比べて本体価格が比較的安価な製品が多い点も導入しやすい要因となります。
主な用途(耐食性のもの:局所排気装置、その他:厨房、ビル、マンションなど)
代表的な用途としては、レストランや飲食店の「厨房排気」が挙げられます。
また、オフィスビルや商業施設、マンションなどの建物全体の換気システム(空調設備内)は、複雑なダクト網を通して各フロアや部屋の換気を行う必要があり、静音性も求められるため、シロッコファンが多用されます。
また、耐食性のシロッコファン(一部鋼板製)は、大学や企業において局所排気装置にも多く採用されています。
ターボファン:高効率でパワフルな排気が可能
ターボファンは、シロッコファンとは対照的に、より高い静圧と大風量を生み出すことに特化した高性能な排気ファンです。研究室や工場など、特定の物質を確実に排出する必要がある場所では、その優れた性能が安全で快適な環境維持に役立ちます。
構造と特徴
ターボファンは、シロッコファンと比較して羽根の枚数が少なく、一枚一枚の羽根が幅広で、後方に向かって大きく湾曲している「後向き羽根」を備えています。この翼の形状は、空気抵抗を最小限に抑えつつ、効率的に空気を加速させることを可能にします。高速で回転させても空気の流れがスムーズであるため、高い静圧と大風量を同時に実現できます。
また、ターボファンは一般的に効率が高く、高静圧用途において省エネ性に優れています。同等の風量・静圧条件ではシロッコファンと比較して消費電力を低減できる場合があります。
一方で、作動音が大きくなる傾向があるため、設置場所や防音対策の検討が重要になります。
主な用途(工場、クリーンルーム、局所排気装置など)
ターボファンは、その高い排気性能と効率性から、工場の集じん設備やクリーンルームの空調システムなど、清浄な空気を安定して供給・排出する必要のある場所で用いられます。
特に、大学・企業の研究室で用いられる局所排気装置においては、高い静圧で有害物質を確実に捕捉・排出するためにターボファンも広く採用されています。
その他のファンとの違い|プロペラファン・斜流ファンの特徴
業務用排気ファンには、シロッコファンやターボファン以外にも、「プロペラファン」と「斜流ファン」といった種類があります。
プロペラファンは、ご家庭の換気扇のように壁に直接取り付けて使用されることが多く、ダクトを使わずに大量の空気を入れ替える用途に適しています。静圧(空気を押し出す力)は低いですが、大風量が得られるため、工場や倉庫の一般的な換気など、広い空間の空気を効率よく入れ替えたい場合に活用されます。
一方、斜流ファンは、プロペラファン(軸流ファン)とターボファン(遠心ファン)の中間的な特性を持つファンです。軸流ファンのように直線的に空気を送る能力と、遠心ファンに近い静圧性能を併せ持っています。この特性から、ダクトの途中に設置して排気能力を補強する「ブースターファン」として使われるなど、限られたスペースで効率よく排気したい場合に採用されます。
研究室・ラボの排気で確認したいポイント
ここからは、特に安全性が重視される研究室や企業ラボといった環境において、設備管理担当者が設備の新設・改修や点検を検討する際に確認しておきたいポイントをご紹介します。
ドラフトチャンバーなどの局所排気装置では、必要な排気風量を維持する
ドラフトチャンバーやヒュームフードなどの局所排気装置は、実験中に発生するガスや蒸気を作業者の呼吸域に広がる前に捕集し、屋外へ排出するための設備ですが、これらが十分に機能するためには、開口部で必要な制御風速を維持し、発生した物質を適切に捕集できていることが必要です。ファンの劣化、ベルトの緩み、ダクト内の汚れ、フィルターや排ガス処理装置による抵抗の増加などは、排気能力の低下につながることがあります。
「以前より吸い込みが弱い気がする」「異音や振動がある」といった変化があれば、ファンだけでなく排気系統全体を点検することが大切です。
複数の実験設備をつなぐ場合は、排気バランスにも注意する
大学の研究室や大規模なラボでは、1台の大型排気ファンに複数のドラフトチャンバーや実験台の排気口を接続する「集合ダクト方式」が採用されることがよくあります。この方式では、各排気口からの排気バランスを適切に維持する必要があります。
たとえば、特定のドラフトチャンバーのサッシを開けた際に、別のドラフトチャンバーの吸い込みが弱くなるようであれば、排気バランスが崩れている可能性があります。設備の増設やレイアウト変更を行った後も、必要な排気性能が維持できているかを確認することが重要です。
排気ファンの停止・能力低下が安全性に与える影響
排気ファンが停止したり、性能が低下したりすると、有害なガスや蒸気などが室内に滞留するおそれがあります。
そのため、定期的な点検・清掃に加え、異常を早期に把握できるよう、風量や差圧、異音・振動の有無などを確認することが大切です。万が一、排気設備に異常が発生した場合に、どのように実験・作業を停止し、誰へ連絡するかといった対応手順も、あらかじめ整理しておきましょう。
✅局所排気装置のセルフチェックについては、こちらの記事で詳しく解説しています!
排気ファンだけで大丈夫?排ガス処理が必要になるケース
排気する空気に有害ガスや溶剤蒸気、悪臭などが含まれる場合は、屋外へどのように排出すればよいかを確認する必要があります。排出物質や濃度、施設の立地、関係法令などによっては、排気ファンに加えて排ガス処理装置を設けることが必要です。
有害ガス・悪臭・粉じんをそのまま屋外へ排出できない場合
排ガス処理が必要になるかどうかは、主に「何を」「どの程度」排出するかによって決まります。たとえば、酸性・アルカリ性のガス、特定の有機溶剤蒸気、強い悪臭を含む空気を排出する場合には、周辺環境や設備への影響を考慮しなければなりません。
処理方法には、水や薬液でガスを吸収する湿式排ガス処理(スクラバー)、活性炭などで物質を吸着する乾式排ガス処理装置などがあります。必要な処理方法は、対象となる物質の性質や濃度、排気風量によって異なります。
✅スクラバーについてはこちらの記事で詳しく解説しています!
業務用排気ファンの性能を維持するためのメンテナンス
排気ファンは、能力が低下してしまうと、作業環境や安全性に影響してしまいます。そのため、設置後も定期的な点検・清掃を行い、必要な排気性能を維持することが重要です。
定期的な清掃・メンテナンスの重要性
ファン内部の羽根車やダクト内に汚れが付着すると、空気の通り道が狭くなり排気能力が低下してしまいます。また、付着物が不均一であると羽根の回転バランスが崩れ、異音や振動が大きくなり、モーターやベアリングへの負担が増加します。これにより消費電力が増加するだけでなく、機械的な故障に繋がる可能性があります。
さらに、ダクト内に付着した粉じんや油分に引火し、火災のリスクを高める可能性もあります。これらのリスクを避けるためにも、定期的な清掃が必要です。
日常的には、異音・振動・におい・吸い込みの変化がないかを確認し、定期点検ではファン、モーター、ベルト、ダクト、フィルターや排ガス処理装置を含めて状態を確認します。
扱う物質や使用頻度に応じて、点検・清掃の計画を立てることが大切です。
点検・修理は専門業者への依頼がおすすめ
排気ファンの不具合は、ファン本体だけでなく、ダクトの詰まり、ベルトの劣化、ダンパーの不具合、排ガス処理装置の抵抗増加などが原因になっていることもあります。そのため、風量低下や異常が見られる場合は、ファンだけを交換するのではなく、排気系統全体を確認することが大切です。
自力での修理には、高所作業での転落リスク、電源処理のミスによる感電事故のリスクが生じるほか、取付けや調整の不備により本来の性能を発揮できなかったり、早期故障の原因になったりすることもあります。
トラブルを未然に防ぐためにも、経験と知識に基づき長期的な保守計画の相談にも対応できる専門業者に依頼しましょう。
まとめ
業務用排気ファンは、工場や研究室、ラボなどで発生する熱、におい、ガスなどを排出し、作業環境の安全性と快適性を支える設備です。代表的なシロッコファンとターボファンは、それぞれ構造や得意とする運転条件が異なります。
特に研究室・ラボでは、ドラフトチャンバーなどの局所排気装置が必要な性能を維持できているか、排気する物質に応じて排ガス処理が必要ではないかを確認する必要があります。
ダルトンメンテナンスでは、研究室や企業ラボなどでご使用の排気ファンの点検・メンテナンスを承っております。
設備管理についてお悩みの方は、まずはお近くの営業所またはお問合せフォームから、お気軽にお問い合わせください。

