クリーンルームのクラスはどう維持する?担当者が知るべき清浄度管理
「自社のクリーンルームは、本当に必要なクラスを維持できているだろうか…」このようなお悩みをお持ちの担当者の方も多いのではないでしょうか?
安定した環境を維持するためには、クラスの考え方を理解し、適切な点検・清掃・設備管理を継続することが重要です。
本記事では、クリーンルームのクラスの基礎知識から、清浄度を維持するための具体的な管理方法まで分かりやすく解説します。
目次
はじめに|クリーンルームと清浄度クラスとは?
クリーンルームは、空気中に存在する塵埃や微生物などを一定レベル以下に管理し、必要に応じて温度・湿度・室圧なども制御する特殊な環境の空間です。
半導体や電子部品、医薬品、食品など、品質管理が重要な現場で広く利用されています。
求められる清浄度は業種や工程によって異なるため、まずは必要なクラスを把握することが重要です。
クリーンルームとは?目的に応じた2つの種類
クリーンルームは、防ぎたい汚染物質の性質や対象製品によって、大きく2つのタイプに分類されます。
①工業用クリーンルーム(ICR):半導体や電子機器などの製造現場で活用され、微粒子による製造上の不良を防ぐことを目的としています。
②バイオロジカルクリーンルーム(BCR):食品、医薬分野などで活用され、微生物やウイルスの侵入・増殖を抑える目的で使われます。
この2種類のクリーンルームは、求められる規格や室圧の設定(汚染を広げないための陰圧管理、または外気遮断のための陽圧管理)において大きく性格が異なります。
清浄度クラスとは?空気のきれいさを表す指標
清浄度クラスとは、クリーンルーム内の空気がどれだけ清浄であるかを示す指標です。
空気中に含まれる微粒子の数によってランク分けされます。クラスの数値が小さいほど、その空間に存在する微粒子が少なく、より清浄な環境であることを意味します。
クリーンルームを運用する際は、この清浄度クラスを指標として設計を行い、実運用において基準値を下回らないようにコントロールを続ける必要があります。
ISO規格(JIS規格)と米国連邦規格(FED規格)の違い
清浄度の定義には、歴史的に異なる規格が使われてきました。現在はISO14644-1に基づくISOクラス表記が主流となっています。
ISO規格では、1立方メートルあたりに含まれる0.1μm以上の粒子数を基準に、対数(10の何乗か)を用いてクラス1からクラス9で表します。JIS規格(JIS B 9920)もこのISO規格に準拠しており、クラス分類は1から9まで規定されています。
一方で、過去の設備資料や図面では、かつて広く使われていた米国連邦規格(FED規格)が使用されていることもあります。この規格では、1立方フィートあたりの0.5μm以上の粒子数を基準にしており、クラス100やクラス10,000などと表記されます。
代表的な対応関係として、
FEDクラス100 → ISOクラス5
FEDクラス10,000 → ISOクラス7
が目安となります。
既設設備の更新や監査対応の際には、両者の関係を理解しておくとスムーズです。
自社はどのレベル?業種・目的別の清浄度クラス目安
必要なクラスは、製品の品質要求や工程内容によって異なります。
必要以上に高いクラスを目指すと設備費や運用コストが増加し、逆に不足すると不良や異物混入の原因になる可能性があります。
【超精密】半導体・電子部品製造(ISOクラス3~7)
半導体製造では、微細な回路への影響を防ぐため、ISOクラス3~5程度の高い清浄度が求められます。
一般的な電子部品製造や精密機器の製造では、ISOクラス5から7のクリーン環境が整備されます。
【衛生管理】医薬品・医療機器・化粧品製造(ISOクラス5~8)
人の身体に直接使用・投与される製品を製造する環境では、異物だけでなく微生物管理も重要となります。
ISOクラス5~8が一般的であり、各工程の作業特性(無菌充填や包装など)に合わせて細分化された管理基準(GMPなど)が定められています。直接肌に触れる化粧品製造工場においても、近年は品質の均一化と防腐剤の削減を背景に、ISOクラス6から8のクリーン環境を導入する企業が増えています。
【異物混入防止】食品工場(ISOクラス6~8)
食品工場では、異物混入や微生物汚染を防ぐため、包装工程や加熱後工程を中心にISOクラス6~8程度の管理が行われています。
これにより、製品の保存期間の延長(ロングライフ化)や、不具合発生による回収リスクの回避をしています。
クリーンルームの清浄度を維持するための4原則と具体的管理方法
クリーンルームの清浄度を維持するためには、人の動きやモノの流れ、毎日の運用のなかに4つの重要な原則を習慣化することが重要です。
原則1:汚染物質を「持ち込まない」
クリーンルームを汚染する最大の要因は、作業者から発生する皮膚片や毛髪、そして着用している衣服から出る繊維くずといった「人」に由来するものです。クリーンルームに入るすべてのルートにおいて防壁を設け、汚染の持ち込みを物理的・手順的に遮断することが最初の防衛策となります。
人の管理:入退室ルールとクリーンウェアの徹底
最も多くの塵埃を持ち込むのは、室内に立ち入る人です。そのため、入退室の手順を定めることが必要です。
また、クリーンウェア(防塵衣)の正しい着用、粘着ローラーによる衣服表面の塵埃除去、手洗いを徹底します。入室直前にはエアシャワーを浴びて付着した塵埃を吹き飛ばし、衣服の下の衣類から抜け落ちる繊維くずや毛髪などの飛散を極限まで抑えます。
また、このような管理教育を定期的に実施し、運用レベルを維持することも欠かせません。
モノの管理:物品の持ち込み手順とパスボックスの活用
製造資材や測定機器などを室内に持ち込む際にも注意が必要です。クリーンエリアと非クリーンエリアの境界には、必要に応じてパスボックスを設置します。
持ち込む物品はゴミや油分を除去した後にパスボックス内を経由させ、クリーンルーム内に直接外部空気が流れ込まないように工夫します。
このように、外気の流入を抑えることが、清浄度の維持につながるのです。
原則2:汚染物質を「発生させない」
クリーンルーム内で稼働する設備や部材、人の動作からも塵埃は発生します。
設備・部材の選定と発塵対策
クリーンルーム内で使用する機械設備は、発塵の少ない設備や備品を選定し、不要な動作や急な移動を減らすことも有効です。
また、室内で使用する文房具や備品にも、特殊なクリーンペーパー(無塵紙)や、発塵しにくいツールを使用します。
人の動作においても、繊維くずや皮膚の微片を落とす可能性があります。動作基準を教育に組み込むことなど、日常業務の中で発塵を抑える工夫が、長期的な品質維持につながります。
原則3:汚染物質を「堆積させない」
発生した塵埃や、持ち込まれた微粒子が床や設備の上に降り積もると、製品への接触汚染のリスクが高まります。
定期的な清掃の重要性と正しい手順
清掃作業は、塵埃を空気中に舞い戻らせることのないよう、特殊なクリーンルーム専用ワイパーや、HEPAフィルターを搭載した掃除機を使用して行います。繊維くずは静電気を帯びやすく空気中に漂いやすいため、乾いた布での乾拭きは粒子を舞い上げてしまう可能性があります。
ウェット清掃をする際は、クリーンルーム用洗剤や純水を使用します。
清掃は、高い位置(天井や壁の上部)から低い位置(床面)、および空気の流れの上流から下流に向けて一定方向に拭き、清掃手順書を明確に定義していつ誰が行っても一貫した清浄化ができるように標準化しましょう。
清掃記録を残し、管理状況を見える化することで、品質管理の信頼性も向上します。
原則4:発生した汚染物質を「除去する」
空気中に漂う微粒子は、高性能な空調設備と適切な換気フローによって除去することが必要です。
空調設備の役割と管理(差圧・温湿度)
クリーンルーム用の空調システムは、単に温度を快適にするだけでなく、室内の気流をコントロールして汚染を排除する役割を持ちます。
天井に設置されたファンフィルタユニット(FFU)から押し出された清浄な空気が室内に気流をつくり、排気口へ微粒子を運びます。
また、外部からの汚染物質の侵入を防ぐために、部屋の内圧を隣室よりも高く保つ陽圧管理(差圧の維持)を行います。逆にバイオハザードや特定ケミカルを扱う部屋では陰圧管理を徹底し、気密性と圧力の厳格なバランス制御を行います。
フィルター(HEPA/ULPA)の点検・交換
HEPAフィルターやULPAフィルターは、清浄度維持の要となる設備です。
目詰まりや性能低下が発生すると、気流や清浄度へ影響するため、差圧測定や定期点検に基づく計画的な交換が重要です。
✅HEPAフィルターについては、こちらの記事で解説しています!
【コラム】HEPAフィルターは何を除去できる?知っておきたい性能や用途
【担当者必見】監査とトラブルに備える清浄度管理
監査時には、日常的にクリーンルームが適切に管理されているというエビデンスを示すことが求められます。
清浄度を「見える化」するモニタリング
安定したクリーンルーム運用には、測定データの活用が欠かせません。
室内の温度、湿度、差圧、風量を継続的に記録し、数値の乖離や異常を早期検知できる仕組みを作ることが、トラブルの未然防止と監査時の対応を向上させます。
パーティクルカウンターによる定期測定の重要性
パーティクルカウンターによる微粒子測定は、クリーンルームの状態を客観的に確認する有効な方法です。
定期的な測定と記録の蓄積により、フィルターの劣化、空調性能の低下、清掃不足などの兆候を把握しやすくなります。
まとめ:計画的な清浄度管理で安定したクリーンルーム運用を
クリーンルームのクラスは、設備を導入しただけでは維持できません。入退室管理、清掃、測定、空調設備の点検、フィルター交換などを継続的に実施することで、安定した清浄度を維持できます。
ですが、実際の現場では「測定値にばらつきが出てきた」「フィルター交換時期が分からない」「設備の状態を確認したい」といった課題を抱えることも少なくありません。
当社ダルトンメンテナンスでは、クリーンルーム設備の点検・メンテナンスをはじめ、清浄度測定や設備改善のご提案まで幅広く対応しています。
クリーンルームの運用や設備管理に課題を感じている方や、とりあえずプロに相談したいという方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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